カジサキモトキ初のアートブック（題名未定）が、2025年7月5日に刊行される。日常とは、無数の瞬間が織りなす繊細な均衡であり、私たちはその上に、気づかぬまま立っている。梶嵜にとって作品を生み出すことは、そうした名もなき瞬間に、ひとつひとつ名前を与える営みでもある。本書は、その主題に焦点をあて、音楽を出発点としながら、絵画、グラフィック、アパレルなど複数のメディアの横断によって構成された作品を、紙面という、限定的な空間で再構築し、ひとつの作品として結実させた一冊である。

音、言葉、絵、写真。異なる言語が、静謐な場である紙面の中で交差するとき、「読む」という行為はもはや、ただの視線の移動ではない。音楽とともにページを辿ることで、言葉やイメージは意味を帯び、互いに呼応しながら、静かに形を結んでいく。また、ページをめくる音、視線の移ろい、思考の中に生まれる余白、それらすべてが重なり合い、まるで読者自身が音を奏でていくような、演奏体験ともなる。言い換えれば、これは「読むこと」によって始まる音楽。読むという行為が、音の在りかを探る静かな旅となり、読者の身体を通し、さまざまな概念に触れながら、やがて音は輪郭を持ち始める。その瞬間に現れるのは、最も親密でありながら、最も曖昧な主題、日常。移ろいゆく無数の瞬間のなかに、たしかに息づく気配を手渡すために、静かに編まれた作品である。

書店またはオンラインストアにて販売予定。

オンラインストアがオープン。音楽、絵画、グラフィック、アパレルなど、多彩なラインナップを展開中です。多くが一点ものとなっており、ここでしか出会えない作品ばかり。ぜひ一度ご覧ください。